
佐伯豊南高校 福祉科の学び
長期にわたる施設実習や出前授業、地域イベントなどを交えて実践的な学びをしている豊南高校の福祉科。介護福祉の仕事の魅力、夢へ向かって学びを深める生徒たちの思いとは?

このまちで、人の尊厳を支える力を学ぶ

豊富な施設実習や地域イベントへの参加を通じ、人と人との関わりを深めている同科。学びの中で最も重視しているのは、相手の立場や気持ちを考える力を育てることです。「福祉の現場では、言葉で思いを表現しづらい方もいるため、自分の思いを押し付けるのではなく、表情や状況などから相手の気持ちを察する姿勢が必要です。ここでは話を聞く力や相手を思いやる力など、幅広い力を育てるので、どんな仕事や場面でもその能力は発揮できるはずです」と麻生先生は学びの魅力を語ります。また座学の勉強にも励むため、通常は、専門学校で取得する国家資格「介護福祉士」が取得できるのも特徴です。
もう一つ、同科が積極的に取り組んでいるのは、科学的根拠に基づく福祉介護のケアを学ぶこと。「たとえばオムツの付け替え一つでも、なぜそのオムツを選び、どうしてその付け方にしたのか?もしくは、付けずに済むにはどうすれば良いのか?豊富な知識でケアをするのが、介護福祉のプロ。そうして利用者の方の『人間らしく生きたい』という尊厳を守る支援をして、生活を維持する介護ができる人を育てたいですね」。こうして多角的な経験と知識を身に付け、社会へ巣立っていくエッセンシャルワーカーたち。情報化やAIの導入が進むこれから先の時代でも、地域になくてはならない貴重な存在となるはずです。


知識と経験で相手を理解することが信頼関係に
実習で心に残っているのは、1年生の時に訪れた障がい者施設での場面。「言葉でのコミュニケーションが難しい利用者の方に、授業や実習で学んだ知識を活かして接しました。表情を見ながらいつも以上に表情を豊かにして、身振り手振りを交えると、相手が笑顔になったんです」と頬を緩ませます。また、その時の職員が、利用者の生活環境や好み、苦手なこと、特性などを理解していたことで、利用者が安心して笑顔で生活できる様子を間近に見た佐野さん。「本人の思いや特性の理解が信頼関係につながると実感しました」と話します。人と人との距離の近さが魅力の地元佐伯に住みながら、障がい者施設で働くのが目標。「 学んだ経験や介護福祉士の資格を活かし、一人ひとりに合ったコミュニケーションをとって皆に頼られる職員になりたいです」と夢を語ります。

学ぶ姿勢を持ち続け、コミュニケーションを大切に
「介護福祉士である母親の職場で、利用者の方と接したことで関心を持ちました」。同科では様々な実習を行いますが、中でも、課題として自宅でオムツを履いて過ごした体験が特に忘れられないそう。「違和感があり、周りの目も気になり、こんな気持ちなんだなと思いました。そこで、施設実習では、利用者の方の思いや状況に配慮して、食事やレクリエーションの前にトイレをすすめたり、オムツを付けた経験からできる提案をしました」と貴重な学びを振り返ります。また「ある利用者の方が、私の顔と名前、一緒にしたレクリエーションを一年越しで覚えてくれていたことがうれしかったです」と励みになった瞬間も。卒業後は市内の特別養護老人ホームに入職予定。「常に学ぶ姿勢を忘れずに成長したい。利用者の方や職員同士とたくさん会話をすることを心掛けたいです」と目を輝かせます。

体力に自信がない人でも、長く安心して働ける

高校で学んだ実習と座学を活かして
高校の時に同施設の見学に訪れ、事務所の明るい雰囲気や介護長の人柄、利用者を大切にする職員の笑顔にひかれ、「豊寿苑」へ就職。現在は食事や排せつ、入浴介助などの業務を担当しています。高校3年間の実習や、認知症を含む幅広い福祉分野の座学を受けたことが、就職後の実務に役立っているそう。「コミュニケーションをとると笑顔が返ってきます。利用者の方ができることに注目して、自立を応援することで、尊厳にもつながると思います」。
ハード面とソフト面の環境の良さ
「佐伯出身だと相手の方言も理解しやすいので、会話がスムーズに進みやすいですね」と地域で働く良さを語る児玉さん。休日は姉とドライブをしたり、上浦に住む祖母の家を訪れたりと、地元で大切な時間を過ごしています。
「豊寿苑」では身体の負担を抑える介護が重視され、スライディングシートやインカムを積極的に導入。介護長と主任が専門知識を持ち、身体の負担を減らす働き方を教える教育体制も整っています。また、職員同士のコミュニケーションも多く、一人で問題を抱え込みにくい環境も、心の支え。「もともと身体は丈夫ではない方ですが、身体的な負担も少なくて長く続けられそうです。同じ年代との関わりが苦手でも、ご年配の人と話すのが好きなら、この仕事に向いていると思います」そう語ってくれました。
豊富な経験を積み、相手の心を気遣うスキルがアップ

一人ひとり違う“距離感”をふまえて
父から手に職を付けるようにすすめられ、介護福祉の道へ進んだ吉田さん。もともと高齢者と接することが好きで、高校の施設実習が就職の決め手になった田原さん。2人は就職して今年で6年目を迎え、現場で多くの利用者の方と触れ合い、介護福祉のプロとして活躍しています。
仕事は食事や排せつの介助、巡視をはじめ、居室の掃除や記録など多岐にわたります。田原さんは、利用者の方とのコミュニケーションやカルテから趣味や好みなどを理解して、その人に合う接し方や介助をするように心掛けているそう。「冗談を言い合える方もいれば、距離感が必要な方もいます」。吉田さんも相手の気持ちや希望を尊重し、その人らしく過ごせるよう、寄り添った支援に努めています。
心と心の触れ合いが、働く糧に
「人と話すのが得意ではなかったんですが、現場で利用者の方と接すると、その方の背景を知ることができて。気付けば話すことが好きになっていました」と吉田さん。「利用者の方の笑顔、ありがとうという言葉が大きな励みです」と田原さん。高校で学んだことと、現場で経験を重ね、利用者の方と接しながら知識や技術を磨いて大きく成長した2人。地域に欠かせない“エッセンシャルワーカー”として、これからも介護福祉の現場を明るく照らしてくれます。
働く人、利用者が笑顔になるノーリフティングケアとは

ノーリフティングケアとは、介護する側とされる側の双方にとって安心な、“抱え上げない・持ち上げない・引きずらないケア”のこと。職員の体に負担のかかる作業を減らすために福祉用具(リフトなど)やICTなどを活用するだけでなく、職場環境の改善に取り組むことも含まれます。働く人にとっては負担軽減や専門的な能力発揮につながり、利用者にとっては自立支援を進める機会にも。ひいては施設全体に笑顔が広がることが期待できます。

力で支える仕事から、人の輝きを引き出す仕事へ
「ノーリフティングケア」、「介護テクノロジー」を活用した先進モデル施設の一つとして、取組を進めているのが「長良苑」です。機器を導入するだけでなく、職員全体で研修や勉強会を行い、職員と利用者が笑顔になる介護の現場を目指しています。

一人ひとりに寄り添った介護を提供
時代に合わせて働き方がアップデートしている介護現場。『長良苑』がノーリフティングケアを導入してからの、職場や職員の変化はとても大きいと言います。 かつては身体的負担が大きくなりやすかった介助の現場ですが、同苑では『職員が長く健康に働ける環境づくり』を目指し、その取組を決定。現在は、利用者の方に合わせて、介護用リフトやフレックスボードなどを使い分けるように。研修や現場での実践を重ねて使い方を学び、職員の身体の負担が軽減されたのはもちろん、利用者一人ひとりに合った介護が提供できるようになりました。車いすへの移乗の際には、利用者の方も無意識に身体に力が入ってこわばってしまうことがありましたが、用具を活用することで、身体の緊張がほぐれる傾向にあるそう。衣類と身体の間に生じる摩擦や圧迫も減り、職員が緊張する場面も少なくなっています。
時間と心のゆとりがコミュニケーションを生む
業務にはインカムを導入して日報を記録しており、スマホに連動させるなどICTも積極的に活用。様々な場面でゆとりが生まれ、利用者との会話が増えたことも大きな変化です。 「私が働き始めた当初とは考え方やアプローチがまるで変わり、介護は力で支える仕事から、人の輝きを引き出す仕事に変わっています」そう語るのは、同施設で働き始めて32年になる山城さん。利用者と職員の心の距離が近くなることで、職場に笑顔や安らぎが広がっています。

介護保険全般に関する問い合わせ
高齢者福祉課 介護保険係(本庁舎1階10番窓口)📞22-3117

