令和6年度から住民税と併せて納入することになった「森林環境税(※1)」について、関心を抱いている人は多いのではないでしょうか。また、世界でも2050年のカーボンニュートラル(※2)の実現へ向けて森林を守り機能を高める動きが進んでいます。
世界や国、地方で森林への意識が高まっている今、森林と私たちの暮らしの関わりや山の仕事について、学んでみましょう。
(※1)森林環境税
自治体が森林整備などの財源にあてるために、令和6年度から国内に住所のある個人に対して課税することになった国税。1人当たり年間1,000円が徴収され、国が森林環境譲与税として自治体に分配します。
(※2)カーボンニュートラル
温室効果ガスの排出を、人為的に吸収もしくは除去することで、実質的にゼロにする考えです。令和2年10月、政府はカーボンニュートラルを目指すと宣言しました。地球温暖化への対策が全世界での共通課題となっており、各国でカーボンニュートラルの実現を目指しています。佐伯市は、ゼロカーボンシティ宣言を表明しています。
森林の役割
森林は、私たちの生活に欠かせないたくさんの機能をもっています。例えば、近年は季節を選ばず集中豪雨が発生し、自然災害に見舞われる地域も増えていますが、森林には土砂災害を未然に防ぐ役割もあります。ほかにも、森林は多面的に私たちの暮らしと深く関わっており、多くの恩恵をもたらしてくれています。
森林の機能
・多様な生物を守る
・地球温暖化を防ぐ
・快適な環境を作る
・山崩れや台風などの災害から守る
・水を蓄える
・豊かな資源を生み出す
・安らぎを与えてくれる
・文化の伝承・教育の場
佐伯市では森林の役割を最大限に発揮させるため、循環型林業を推進しています。
森林の多面的な機能を発揮させるために大切なのは、「伐って、使って、植えて、育てる」という循環型林業(森林資源を持続的に活用していく林業)を行うことです。適切な森林整備を行うことで、二酸化炭素の吸収能力が上がったり、伐採された木材は加工され新たな価値を生むなど地域の活性化につながったり、環境にも地域にとっても良い循環が生まれます。豊かな森林環境が守られることは、持続可能なまちづくり、つまりは佐伯市が目指すオーガニックシティ(循環型共生社会)へとつながります。
佐伯に根付く、森の守り人
佐伯では「佐伯広域森林組合」が佐伯型循環林業に取り組んでおり、全国的にも注目を集めています。
林業を産業として成り立たせ、地域活性化や環境整備も担っている同組合の歩みをのぞいてみましょう。
佐伯がチャレンジしてきた独自の循環型林業
「佐伯広域森林組合」が佐伯型循環林業に取り組み始めたのは、15年近く前にさかのぼります。戦後の造林ブームといわれた1950年代以降に植えられた人工林が伐期を迎えた頃。伐採した木材に付加価値をつけて出荷し、山に植林するという「伐って、使って、植えて、育てる」を基本方針とした林業を進めてきました。
「たとえば野菜を収穫したらもう一回種や苗を植えるように、伐った後には木を植えることが大切です。佐伯の森林率は87%と県内で一番です。伐採した跡を放置すると、森林が荒廃してしまうため、再造林をして、手入れをすることが欠かせません。伐った木を売り、苗を植えて森林を育てることで、山に価値が生まれて、昔から続いてきた森林を次の時代に繋ぐことができます。林業が成り立つことで、地球にやさしい環境づくりにもつながります」と同組合の戸髙壽生組合長は話します。
植えるときに必要な苗も、以前は他県から移入していましたが、10年ほど前から同組合では苗の生産にも取り組み始めました。「大型の製材工場の稼働により、伐採量も増え再造林のための苗が不足し、『ないなら自分たちで作ろう』と、地元の人と協力して苗木生産者協議会を立ち上げ、苗の生産を始めました」。今では市内で植林している苗木の4割を地元でまかなえるまでに。
時代に先駆け、森林を循環させる仕組みづくりにどんどんチャレンジした同組合。苗づくりから森林整備、製材加工、そして出荷まで一貫で行っている組合は全国的にも珍しい存在として、クローズアップされています。
常に挑戦の姿勢を辞さない同組合の今後の目標は、現在約6割を占める輸入材の代わりに、国内の木材自給率を増やしていくこと。また、一般的には需要のある木の大きさは規格で決まっていますが、需要が少ない「大きく育った木(大径材)」に付加価値をつけて出荷しようと、大径材を加工できる製材工場も建設中です。
森林を守り、林業を生業として成り立たせるための挑戦を続けてきた佐伯の再造林率は、全国平均が3~4割といわれる中、約8割と全国的にも高い。その中でも、組合の管理している山林の再造林率はほぼ100%を達成。その結果、雇用が安定し林業に興味を持ち携わる若手世代も増えているなど、山の仕事は活気を帯びています。佐伯の林業が盛んになることで、地域や環境に良い循環が生まれています。
森の守り人インタビュー
以前はサービス業の仕事に就いていましたが、体を使う仕事がしたいと思って転職をしました。普段は製材機械の操作が主になります。だんだんと機械化が進んでいますが、まだまだ人の力が必要な部分もあり、自分の手で製材をしている実感がありますね。力仕事だけに男性主体の仕事と思われがちですが、出荷前の作業には女性も多く関わっています。職場は働く人の体が1番という方針なので、少しでも体に負担がないように、職場環境を常に改善してくれています。
兄が佐伯広域森林組合で働いていて興味を持ったのがきっかけで林業を始めました。下刈りや伐採した後の山をきれいにする作業、鹿防止ネットの取り付け、植林など、様々な仕事があります。暑い時期の作業は大変なときもありますが、杉を植え付けた後の山を見ると、山が元気になっている感じがして晴れやかな気持ちになります。自然の中で仕事ができるのも気持ち良いです。
中学生の時に林業のパンフレットを見て「面白そうな仕事だな」と思っていました。親の転勤の関係で佐伯に引っ越してきたので、自然と触れ合う仕事がしたいこともあり、造林班で働くことを決めました。もともと体を動かすことが好きで、体力に自信もあったので、きついと感じることはあまりないですね。山をきれいにする仕事なので、日々充実感でいっぱいです。
相続登記
不動産(山)の持ち主は、相続登記をしましょう。
令和6年4月から、不動産(山林含む)の相続登記が義務化されています。すべての山には所有者がいますが、近年では所有者が分からない山が増えています。山林が放置されることで森林の機能が発揮できなくなっていくので、森林を守るためにも相続時の登記手続をお願いします。
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(土・日・祝日、12月29日~1月3日を除く)
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